やっぱりカウリスマキが好き。「それぞれのシネマ」:カウリスマキ編
タイトルは「鋳造所」。鋳造所で働く工場労働者が、労働を終えて、工場の出口にある映画館に行く。工場の壁も青一色で、手すりだけがやけに黄色い。映画館も殺風景。切符売りも、観客も、映写技師もみんな無口で無表情。いままで切符を切っていた係員が、制服を脱ぎ、帽子をかぶり直して映写技師に変身。そこで上映されているのはロック音楽に乗ったリュミエールの「工場の出口」。
33作品の中で際立っていたのは、北野武とカウリスマキの作品だけが、いわゆるブルーカラーの観客を題材として扱っていたことです(コーエン兄弟も農家っぽかったですが)。映画は一部の特権階級だけが見るものではなく、工場労働者だって誰だって、みんな見る権利があるんだ、というメッセージが込められていたように思います。
また、満席だった作品も、カウリスマキ以外ではほとんどなかったように思います。といっても6人で満席なんですが。そしてこの6人、無表情で、しかも作業着姿で映画を見ているのですが、加藤さんのレビューにもありましたが、スクリーンの中で映画を見ているはずの観客が、実はスクリーンの向こう側から私たちを見ているという錯覚に陥らせてくれた作品でもありました。つまり、映画を見ているはずのわれわれが、実は映画の題材になってしまっている。そう意図して作られたかどうかはわかりませんが、そう思うとどこかおもしろい。違和感もありますが。
残念なのが、主役の映写技師、エスコ・ニッカリ。カウリスマキ映画では常連の俳優なのですが、この作品が完成した後、急逝されてしまったようです。カウリスマキ映画では欠かすことのできなかった脇役だったので、とても残念です。合掌。(オオヤギ)



0 Comments:
Post a Comment
<< Home