いよいよフィルメックスが始まりました。
さて、オープニングの「それぞれのシネマ」。世界を代表する監督たちの作品を一挙になめまわす、なんと贅沢な作品でしょう。劇場公開されないのがとても残念です。
最初に「小さなこともできないのに、人はなぜ大きくしたがるのだろうか」というフレーズから始まります。この、大きくしたがる人たちの作品の中から、まずは話題の北野武監督の作品から。あらすじは、オンボロ映画館に自転車で「キッズリターン」を見に来たおじさん。客は彼1人。上映が始まったものの、映写技師(北野武)がフィルムを切ってしまう、フレームをずらす、ピントをはずす、そしてフィルムを燃やしてしまう。それでも彼は文句を言わず、出ても行かず、ただ再開されるのを待つ。がしかし、結局3分で映画が終わってしまう。それでも何も言わず帰ろうとすると、自転車が盗まれていて歩いてトボトボ帰る。というような話。
会場は笑いが絶えませんでしたが、昔のフィルムはナイトレートフィルムという可燃性のフィルムのため、上映中によく燃え出したそうです。1950年代に入ると燃えないアセテートフィルムに変わっていきますが、私が勤めている所の映写技師さん(80歳)から、「よく上映中にフィルムが燃えてねぇ。ぱっとフィルムをつかんで消したものよ。画面に炎が映るんだよね。それにフィルムだってよく切れるもんだから、途中で上映が中断するなんてしょっちゅう。そんなことお客さんもよくわかってるもんだから、のんきに待ってたのよね。今じゃ考えられないけど、それもまた楽しかったわね」とおっしゃっていたことを思い出しました。映写技師さんが体験したことと、北野監督が子供時代におそらく体験したことが、このような形でつなかったことは、映画というものが、ただ単に作品を共有するだけでなく、空間を共有するものでもあるということを改めて感じさせられました。
他の作品については後ほど。(オオヤギ)



3 Comments:
ミュージアム・コミュニケーション・チャンネル・プロジェクトの岩渕です。
古い映画館の空気には独特なものがありますね。可燃フィルム時代の映画館の物語というと、なんといっても『ニュー・シネマ・パラダイス』を思い出してしまうわけですが、それに加えて、2005年、第23回のトリノ国際映画祭でグランプリと観客賞をダブル受賞した坪川拓史監督の『美式天然』も、映画館という場の不思議な空気を伝える佳作だったなぁと思います。長万部で取り壊しが決まった古い映画館に着想を得た物語なのですが、ちょうど「映画館」が過去と現在をつなぐタイム・マシンの入り口になっているというか、日本的な感覚でいうと、「この世とあの世をつなぐ」といわれた安倍清明の井戸のような、「異界の入り口」みたいな…そういう映画館のファンタジックなパワーを素直に伝える作品だったなぁと思いました。上映されたトリノでは、映画祭の直後に取り壊しが決まっていた古い映画館が実際にあり、会期中、多くの市民が「最後のお別れ」に訪れており、『美式天然』を見ながら映画館中が泣いているといった状態で、坪川監督は多くの地元民に抱きしめられて「ありがとう」と言われたそうで、雰囲気に飲まれて、ご本人も泣き続けだったと語っていました。
映画館って、子供の時から親に連れて行かれたり、恋人と行ったり、新しい家族を作ったら子供たちと行ったりという、自分の人生の時間を刻む場所でもあるので、やっぱり、「特別な場所」なんだと思います。そういう意味で、「いや〜、映画っていいもんですねぇ」としか言いようがないです。ハイ。
By
Junko Iwabuchi, at November 18, 2007 at 9:47 AM
映画館は人生の時間を刻む場所、そうですよねえ。ちなみに岩渕先生が一番最初にご覧になられた映画が何だったか覚えてらっしゃいますか。私は公民館で見た「ドラえもん」だったような気がしますが、映画館で初めて見たのは「マルコムX」だったような……。高校時代ですが。ちなみに高校時代、宇都宮にオークラ映画の直営館がありまして、何度も侵入に失敗し、結局一度も入ることができず……。最近中心街に行きましたら、単館系の映画館が軒並みつぶれていく中、オークラ映画だけはまだ残っていて妙に嬉しくなりました。映画館の記憶って作品とともに残っているものなんですね。
加藤さんはいかがですか。
By
Tsutomu OYAGI, at November 20, 2007 at 1:44 AM
私が初めて映画館で見た映画、『ゴーストバスターズ』だったと思います。場所は今なお健在する新所沢にあるシネコンでした。両親と姉の家族全員で行きましたね。ハリウッドが『スターウォーズ』や『ET』の成功を受けてファミリー向け映画を大量生産し始めた時代ですから、まさに我が家もその消費者ターゲットの一員だったということになります。
先ほど『ゴースト~』の公開年月日を調べてみたら、どうやら3歳のときのことだったようです。暗闇のなか不安で、訳も分からず大泣きして家族を困らせました。まさに、そこは特別な雰囲気に包まれた異空間なわけですから。どう考えても3歳の子が映画の内容を理解できるとは思っていないでしょうから(字幕も読めないし!)、私の家族は映画を楽しみに行ったわけではなく、一緒に映画館に行くことに意義があったから連れて行ったのでしょうね。
By
Mai Kato, at November 20, 2007 at 9:49 AM
Post a Comment
<< Home